鮨に醤油を付けるように

もう20年近く前になりますが、
そばの美味しい食べ方を教えてください。」とだけ書いたメールを頂いたことがあります。その「そば」がどこの何を指すのか不明だったので、「初めてのざるそばの食べ方」的なのを書いて返信した記憶がありますが、要望とマッチしていたかは不安の残るところです。

うちのメニュー帳のせいろそばのページには
そばつゆはそばの⅓に付けて召し上がると丁度よい味加減にしております。」と書かせていただいています。
これは作り手側の基準であって、別につゆなんて付けたいだけ付けていただいていいんですよ。そこは好みですから。
ただし、「これをやっちゃあ蕎麦が台無し!」というポイントがあります。
マグロのにぎりの食べ方を思い浮かべて下さい。
醤油の付け方、付ける量はひとそれぞれですが、醤油に鮨を放り込むひとはいませんよね。もし、さらにかき混ぜたら。ぐちゃぐちゃに崩れるし、しょっぱくてと食べられたものではありません。
見た目ではわかりにくいですが、蕎麦でも同じ事が起こっています。
つゆの中でかき混ぜるとぐちゃぐちゃに崩れているんですよ。(切れる切れないの問題ではありません。食感が別物になってしまいます。)


板前はよく「あたりを見る」なんて言いますね。味付けの決定を下すのです。
人が美味しいと感じる塩加減は旨味の量と比例します。これを黄金比としましょう。
実際、人間の舌や脳が旨味成分か否かを厳密に区別できるわけではありませんので、参考程度にしてもらえばいいと思いますが。
醤油は旨味もかなり含んでいますが、やはり塩味が強いです。
例えば、旨味たっぷりのマグロの刺身に付けて食べるとそれだけで美味しいです。
そばつゆは黄金比に近いですが、ダシをたっぷり使って旨味は多いものの、やや塩味を強く加減します。
蕎麦は意外とタンパク質も多いし味(旨味)を感じますよね。
そこでバランスが取れるわけです。
黄金比に近いですからお湯で薄めてかけそばを食べてもそれなりに美味しいですし、そば湯で割って美味しく飲めるってのはそうゆうわけです。
塩味も旨味も極濃いものは少しずつ口に入れたら美味しさを楽しめる。
塩味も旨味もほどほどのスープはゴクゴク飲めます。

私が「そばつゆはそばの⅓に付けて召し上がると丁度よい味加減にしております。」と書いているのは
この黄金比と蕎麦を啜るのに丁度よい水分量に基づいています。(結局はわたし個人の味覚によるところですけどね )
ぜひ、一度試してみてください。
蕎麦をつまんでから口に入れるまで蕎麦を箸から離さないでくださいね。くれぐれも。

P.S.
『食べ物の温度と味覚の関係』の話もしたいですね。

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